高純度結晶からなるゲルマニウム半導体検出器は、その高いエネルギー分解能により精密γ線核分光実験には必要不可欠な検出器であり、国内外で広く用いられている。従来、Ge検出器は液体窒素で冷却して使用していることから、定期的な窒素補填にかかる手間、設備、酸欠の危険性等の検出器の汎用面で、いくつか問題がある。また、放射線損傷による性能劣化を回復する為に定期的なメインテナンスが必要となる。これまでこうした困難を克服するべく、液体窒素に替わる冷凍機によるGe検出器冷却の開発が試みられ、実際に商品化されているケースもある。 現在、J-PARCにおけるハイパー核γ線核分光実験(E13)に向けて、大規模ゲルマニウム検出器群Hyperball-Jのデザイン・設計が東北大学を中心に進行中であるが、大強度ビームによるGe検出器の放射線損傷の増大が深刻な問題となっている。放射線損傷の分解能への影響はGe結晶温度と密接な関係があることが経験的に知られており、Hyperball-Jで使用される検出器は常時結晶温度を85K以下に保持しなければならないが、従来の窒素冷却では不可能である。またコンパクトで、低振動、且つ充分な冷却能力の3条件を満たす冷凍機がないのが現状である。本セミナーではここ一年の、超小型、且つ低振動なパルス管冷凍機でのGe検出器による冷却方法の開発(KEK,富士電機、セイコーEG&G,東北大学での共同開発)の経過・現状を報告する。