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第4回論文賞(2013年度修士論文)

 

第4回測定器開発・優秀修士論文賞が決定いたしました。
受賞されたお二人には、心からお祝いを申しあげます。

   

第4回測定器開発優秀修士論文賞は、2014年4月23日に開催された最終選考委員会において次の論文に決定し、2014年9月20日の物理学会秋季大会(佐賀大学)において表彰式及び特別講演会が開催されました。受賞者にはクリスタル製の表彰盾のほか、
本賞協賛企業である セイコー・イージーアンドジー㈱、 林栄精器㈱から副賞としてアマゾン券が贈呈されました。

優秀論文賞

論文題目

KOTO実験に用いるInner Barrel検出器の製作と 宇宙線ミューオンを用いた性能評価

本 文 Abstract(84kb pdf)、 本文(33Mb pdf)、 講演スライド(8.7Mb pdf)
著者氏名 豊田 高士(大阪大学)
授賞理由   KOTO実験の到達感度を左右することになる、Vetoシステムの性能を最大限引き出すため新たに設置されるガンマ線検出器、Inner Barrelの開発研究である。検出器のファイバーを含む各構成要素の品質評価や性能評価を徹底的に行い、高い総合検出効率実現の妨げとなりうるWLSの発光のばらつきを見つけ出した。そこで自らのアイディアで間近に迫った実験に向けた対策を考案、実機システムの製造を自ら主導し、所定の性能を実現した行動力はたのもしい。選考では、背景技術の深い理解と本人の独創性、その熱意なども高く評価された。
実機システム構築においてしばしば遭遇する「現実」の問題を整然と分析し、限られた時間で実現可能な実質的な対策を打ち出し実行するという、まさに実戦的な、実験物理屋の最重要なプロセスがこの修士論文には、論理的に記録されている。

 

論文題目 シグマ陽子散乱実験のため検出器群開発
本 文

Abstract(1.2Mb pdf),  本文(14Mb pdf)、 講演スライド(2.9Mb pdf)

著者氏名 赤澤 雄也(東北大学)
授賞理由   バリオン間相互作用の短距離成分を実験的に調べる為、新しい測定手法を提案し、実験装置の心臓部であるシンチレーションファイバーとBGOで構成される円筒型散乱陽子検出器の設計・開発を行った。ビーム実験を自ら立案して性能評価を行い、大強度実験の為の新しい検出器を実現しており、これらの主体性・総合性が高く評価される。

特に、検出器性能の評価を合理的に行う手法には、抜きん出た能力が認められ、また円筒形検出器の製作におけるさまざまな創意工夫には、測定器開発研究の原点が感じられた。測定器技術に関する深い理解に裏打ちされた、地道な研究成果を積み上げて来たことが、内容に厚みをもたらす論文であった。

第4回目を迎えることになった測定器開発優秀修士論文賞、今年度も14編の修士論文が、全国から集まった。毎年のことながらいずれも研究の内容・論文としての完成度ともに高いレベルで、我が国の大学院修士課程における測定器技術に対する高い意識が伝わって、審査委員一同大変頼もしい思いであった。
14編の内訳は、分野別には素粒子6、原子核5、宇宙2、原子物理1となっており、宇宙からの応募は例年と比較すれば少なかった。研究対象となった技術内容における分類では、半導体検出器4、ガス検出器2、シンチレータ4、光センサー1、検出器複合システム3となり、シンチレータ関連の研究が例年に比べ多かった印象である。
選考は、素粒子、原子核、宇宙線各分野のコミュニティより推薦いただいた委員を含む合計10名の選考委員(†)により、例年通り2段階で行われた。2月末の締め切り後一月かけて、まず6編の候補論文に絞り込んだ。その後3週間をかけて、全委員がこの6編について改めて採点を行い、各委員が3編の候補論文を挙げた。最終的には4月23日に選考委員会を開催し、委員会としての最優秀論文2編を選考した。
その結果本年は以下の論文に測定器開発優秀修士論文賞を授けることとなった。

測定器開発優秀修士論文賞 選考委員長 幅淳二

(†)<<選考委員リスト(敬称略)>>
 酒見泰寛(東北大学)、末包文彦(東北大学)、
 竹谷篤(理化学研究所)、村上哲也(京都大学)、
 森山茂栄(宇宙線研)、山本常夏(甲南大学)、
 新井康夫(副委員長)、田島治、中平武、幅淳二(委員長)(KEK)