MPPC の実用化
T2K測定器
T2K 実験では、大規模な高エネルギー実験の測定器の実機として初めてMPPC を採用した。棒状のシンチレータの光を、埋め込まれた波長変換ファイバー(WLS)ファイバーで外部に引き出して光センサーで読み出す方式で、1.3 mm x 1.3 mm のMPPC センサーを開発した。実験全体では63500 個のセンサーが使用されるが、すでに平成19 年度から大量生産が始まっており、平成20 年度は納入された24500 個の光センサーのサンプルの性能をチェックした。大量サンプルを効率よくテストするため、図1に示すような64 個のサンプルを同時に測定できるシステムをTrip-T チップを用いて測定器開発室で開発した。測定項目は、ゲイン、ノイズ、光検出効率(PDE)および、それぞれの温度依存性である。図2に1024 個の測定結果を示す。光センサーメーカーから送られてきたデータシートとほぼ一致する結果が得られた。
図1 大量サンプル測定装置: 恒温槽内で温度をコントロールしつつ、光
を照射するとにより64 個のセンサーの測定を一度に行うことができる。
ークダウン電圧を基準にした電圧)をプロットしたもの(左上)、ゲインとΔV の直線
性(右上)、ΔV のメーカーにおける測定値との変化(図)
ILC カロリメータ
ILC カロリメータグループ(CALICE)は、MPPC を用いたカロリメータを開発している。シンチレータの棒 または板にWLS ファイバーを埋めこんで、MPPC で読み出す。電磁シャワー等を高いリニアリティで測定する ため、MPPC にも高いリニアリティが必要とされる。測定器開発室では、高いリニアリティを達成するため、 57 56 高いピクセル数のMPPC を開発してきた。現在1600 ピクセルのものができており、さらに高いピクセル数の ものを開発中である。また、カロリーメータとして測定器を組み上げた時の不感領域を小さくするために、 MPPC のセンサーをシンチレータに直付けにしてフレキシブル基板で読む方式(図3)を採用しており、その ためのパッケージの開発を行った。 平成20 年度は図3に示すような2000 個のMPPC を使用したプロトタイプを作成し、フェルミ研究所でビ ームテストを行った。それに先駆けて、使用するMPPC のテストを行った。現在、得られたデータを解析中で ある。
図3 カロリメータの構造:シンチレータの端部に溝がつけられており、その溝にMPPC が埋め
込まれてWLS ファイバーからの信号を読み出す。MPPC センサーはフレキシブルに取り付けられ
て、シンチレータと位置決めが行われる。
図4 ビームテストを行ったカロリメータのプロトタイプの概念図:2000 個のMPPC が使用されている。