先端加速器推進部  
 活動報告
 
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測定器開発室(2017年3月)
 最近のSilicon-On-Insulator(SOI)ピクセル検出器周りのトピックを紹介する。

[ニュートリノ崩壊の観測を目指した超伝導接合素子(STJ)遠赤外光検出器の開発]
 宇宙背景ニュートリノ崩壊探索(COBAND)実験に向けたNb/Al-STJ の超低ノイズ読出しを実現する極低温SOI(Silicon-on-Insulator)アンプの開発を行っている。SOI 増幅回路の極低温動作の実証テストのため,産総研CRAVITY 製20μm 角Nb/Al-STJ と共にSOI 増幅回路を冷凍機内に設置し300mK 程度まで冷却後、STJ に可視光(465nm)レーザーパルスを照射し、STJ からのパルス応答信号が極低温環境下のSOI 回路によって増幅されたことが確認された(図1)。また,ハフニウムを用いた超伝導トンネル接合素子も遠赤外光検出器の候補として開発を続けている.最近では、ハフニウム酸化層の上に薄いアルミニウム層を用い、従来のHf-STJよりリーク電流密度を約1/16 に低減に成功した。このサンプルで可視光パルス(465nm)応答を確認している。

[液体ヘリウム紫外線シンチレーション光検出を目指す超伝導光検出器]
 液体ヘリウムを標的とした軽い暗黒物質の探索実験のために、反跳ヘリウムによって生成されるシンチレーション紫外線光子(16 eV)を、液体ヘリウム中で直接検出する超伝導検出器の開発を行っている。超伝導検出器として、力学的インダクタンス検出器(KID, Kinetic Inductance Detector)を利用する。今年度は、KID の検出器素子アレイを周波数領域で多重にパルス信号を読み出す、FPGA を用いた読み出し装置の開発を行った。周波数領域を時間領域に変換し、セルフトリガー機能を実装することにより、一本の配線で20 素子のパルス信号(時定数~1μ秒)を同時に読み出すことに成功した。 図2 は、0.3K に冷却したシリコン基板にAm-241 からのα線(5.5 MeV)を照射した際に生じるフォノン信号を、Al で形成されたKID で、15 チャンネル同時に計測した様子である。この読み出し回路の開発により、外部から液体ヘリウムへの読み出し配線による熱流入を格段に減らすことが可能になった。また、KID の素子間のクロストークの理解も進んだ。素子の形状を形成する際のエッチングによる効果と、素子間のキャパシ ティブ・インダクティブな結合が主な原因であることをつきとめた。前者は、数nm のAlN 膜をシリコン基板表面に覆い、後者は、素子の間にグラウンドを配置することにより、クロストークを抑制することに成功した。一方、このような構造は、光子の検出効率を悪くする可能性がある。現在、改良した素子の光への感度を測定を行っている。


図1 Nb/Al-STJの光パルスに対する応答信号を同じく冷凍機内に設置 したSOI回路によって信号が増幅されている


図2 FPGAで開発した専用の読み出し装置で、15の検出器素子を一本の配線で周波数領域において検出したフォノンパルス信号


測定器開発室(2017年2月)
最近のSilicon-On-Insulator(SOI)ピクセル検出器周りのトピックを紹介する。

[Fermilabでのビーム実験]
SOI検出器は厚い空乏層を実現できることからまずX線応用が広がったが、当初からの目的である素粒子実験の崩壊点検出器としても低物質量・高位置分解能・高機能検出器として優れた特徴を持つ。これらの特徴を実証するためフェルミ国立研究所の高エネルギー陽子ビームを使った実験を現在行っている。昨年12月に筑波大グループと共に実験に臨んだ際は残念ながら加速器の故障で実験を行なえなかったが、1月半ばからの再チャレンジでは大量のデータを取ることができている。データ解析はこれからだが、世界初の1ミクロンを切る分解能を目指している。

[温度制御付きセミオート・プローバ]
半導体の各種特性を理解するためには、温度を変化させながら、大量のデータを集め解析することが重要だが、これまではKEKにそのような装置がなかった。今回、-65℃から200℃まで温度変えることの出来るセミオート・プローバを先端計測実験棟のクリーンルーム内に導入することとなった。2月中には周辺工事も終わり、3月からは温度を変えながらウエハー内の多数の素子特性を自動的に測定できるようになる予定である。

図 1. Fermilabのビームラインで実験準備をしている様子。

図 2. 温度制御付きセミオート・プローバ。

測定器開発室(2017年1月)
  測定器開発室では、サブナノ~ナノ秒の発光寿命で30keV以上の高エネルギーX線領域の光子に対しても高い検出効率を有する高速シンチレータの開発を行っている。シンチレータは放射線検出媒体として形状・大きさが比較的自由であり、検出効率や立体角を確保しやすい特徴がある。重元素を含むシンチレータであればMeV領域のガンマ線光子の検出だけでなく、高エネルギーX線領域の光子検出にとっても1mm以下の薄いシンチレータで大きな検出効率が期待され、多チャンネルでも小型化できるなど検出器の高機能化につながる。さらに発光寿命がナノ秒以下の高速シンチレータであれば、ナノ秒幅パルス出力によって毎秒107を超えるような高計数率測定も可能となる。
  最近の成果として、重元素のハフニウム酸化物ナノ粒子を多く含むプラスチックシンチレータ(PLS)の製作について報告する。2ナノ秒程度の減衰時間で高速発光するPLS中に重元素酸化物をナノ粒子のまま分散させることによって、シンチレーション光がシンチレータ内部で透過しやすいまま重元素の重量比を上げることを狙うものである。分散しやすいように有機分子で表面修飾した状態で重元素酸化物ナノ粒子(径~5ナノメートル)を製作することが重要である。そのため超臨界水熱合成法を使った。超臨界水は臨界点374℃、22.1 MPaを超えた状態の水で無極性になっており、無極性な有機溶媒と混ざりやすく反応性も高い。この性質を利用して粒子の合成と同時に有機修飾する。図1のような方法で有機表面修飾されたHfO2ナノ粒子を製作した。:1)Hf(OH)4を水に加え、有機修飾剤としてフェニルプロピオン酸(PPA)を加える。2)水の亜臨界条件(30 MPa, 反応温度: 300℃)で10分間反応させる。3)合成後、トルエンを用いて回収、乾燥させて有機層中のナノ粒子を得る。
  実際に製作されたシンチレータの写真を図2に示す。直径3mm、厚さ約1mm、ハフニウム10重量%を含有する。溶媒はポリスチレン、蛍光体はb-PBDを使った。このシンチレータの側面より放射光X線ビーム(エネルギー:60.0keV)を入射してSi-APDを受光素子とする高速検出器で特性を評価したところ、市販の鉛5重量%添加PLSと比較して検出効率は同程度であったが、時間分解能は市販PLSを上回る0.33ナノ秒(半値幅)を得た。ナノ粒子による効果が寄与したと考えている。今後、合成法の改良、他の重元素添加などの研究を行う。なお、本研究は東北大学・工・応用化学・浅井研究室との共同研究として進めている。

 


図1


図2

 
このページは測定器開発室で更新作業をしております。