測定器開発室について

 
 
 
 
 
 

 

1MPGD : 微細ホールで素粒子を検出

1997年、ヨーロッパCERN研究所のF. Sauliらによって発明された厚さ50ミクロンのフィルムがこの検出器の秘密です。GEM(ジェム)と呼ばれるこのフィルムには直径70ミクロンの穴が 140ミクロン間隔に開けてあります(図1)。銅箔を張ったこのフィルムの裏と表に300ボルト程の高い電圧をつなぐことで、近くを通過した素粒子からの微弱な信号を増幅して検出することが可能になりました。

最近の高エネルギー実験や原子核実験では、高粒子密度や高バックグランド環境下でよりよい性能を得るために、より高い計数率に耐えられて、よりよい位置分解能が求められています。そこで、最近の微細加工技術の発展と相まって、新しいガス放射線検出器が開発されつつあります。このグループでは、Micro Pattern Gaseous Detector (MPGD) の1つであるGas Electron Multiplier (GEM) の開発を中心に行ってきました。GEM は、10年ほど前に、CERN のF.Sauli(1)によって提案された放射線検出器で、図1 に示すような市販の両面フレキシブル基板に多数の細孔が開けられたものです。絶縁体が50μm 厚のポリイミドで、銅箔の厚みが5μm、孔径が70μm、孔ピッチが140μm のものが標準で、このフォイルの両面間に高電圧を印加すると、図2に示すように、通常のワイヤーチェンバーのセンスワイヤー近傍のような高電場が孔内に形成され、これを利用してガス増幅を行います。多数の孔がフォイル上に一様に広がっていて、それぞれの孔がガス放射線検出器として働くので、高計数率に耐えられ、2次元的に一様な性能が得られるます。この特徴から画像データが得られ、いろいろな応用が期待されております。 これまでに、GEM 検出器の動作に関する基本パラメーターの測定や電子回路を含めた検出器システムの開発やその応用を試みてきました。


Fig.1Photo of GEM foil taken by an electron microscope.




図2 GEM孔中での高電場によるガス増幅の模式図
図中では電気力線を青い線で表している。

GEM は、CERNなどで化学エッチング法によって作られてきました。最近、日本の会社でCERN とは違うプラズマエッチング法によりGEMが作られています。また、より放電を少なくするために、レーザーエッチング法との組み合わせによって、新しいGEMが製作されるようになってきました。さらに、新しい製作方法により、厚手のGEM(100μm 厚など)も製作可能になり、少ない枚数でより高いガス増幅度得るのに役に立っています。


[図] GEMを3段用いたガス増幅と2次元パッドからの信号読み出しの模式図

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